相対主義の限界

by 岡崎匡史 November 2nd, 2019

blog128.1.jpgFrom: 岡崎 匡史
研究室より

人を「説得する」ことは、とても難しい。

自分では「自明」なことであっても、友人でさえも耳を傾けてくれない。反対に、友人にとって「自明」なことであっても、自分にとっては釈迦に説法ということもある。

このような両者が分かり合えるには、どうしたらよいのでしょうか?

もちろん、人それぞれ返答の仕方があるはずです。波風を立てないために、私は「互いの意見を尊重しよう」と答えてしまいます。なぜなら、「価値観の押しつけ」という批判を避けることができるからです。

きっと、あなたもこのように対応するのではないのでしょうか?

相対主義


ですが、この考え方を突き詰めると「相対主義」という陥穽におちいってしまうことがあります。

相対主義とは、それぞれ固有の価値基準があり、1つの価値尺度で他の価値を判断すべきではないという考え方です。

たとえば、宗教間のあいだで優劣をつけると大論争になってしまう。Aという宗教は優れていて、Bという宗教は劣っている、という議論に行きついてしまうからです。

もちろん、私たちの日常生活でも「相対主義」が多用されております。互いが譲らず、言い争いばかりしていると、不機嫌な毎日を過ごす羽目にあう。しかし、相対主義を使い回すと、学問的にも不都合なことが生じてくる。

「場」の消失


相対主義の問題点とは何か?


私の立場では、私の方が正しい。あなたの立場では、あなたが正しい。そうすると、これ以上議論する余地がなくなってしまう。


このような消極的な態度になってしまうことです。

相対主義を繰り返すと、議論をする「場」が消失し、学問的な発展が望めなくなってしまう。

では、われわれの知性は、相対主義の前に沈黙せざるをえないのでしょうか?

互いの立場を尊重しながらも、科学的・実証的な根拠を提示しながら、「論証」を積み上げていく地道な作業をし続けるしかありません。


ー岡崎 匡史

PS. 以下の文献を参考にしました。
・Appiah, Kwame Anthony. 2006. Cosmopolitanism: Ethics in a World of Strangers. WW Norton & Company Inc., pp. 30-31.

この記事の著者

岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。

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岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。