From: 岡崎 匡史
研究室より
2020年7月、東京オリンピックが開催される。
「オールジャパン体制」でオリンピック誘致をしていた頃が懐かしい。
さかのぼること半世紀以上前、1964年に行われた「東京オリンピック」は日本の復興と高度経済成長期だった。
当時の日本国民も、国家の威信を世界に示す意気込みがあり、日本の国際的地位を高めるという強い信念があった。
幻のオリンピック
しかし、歴史に埋もれた「幻のオリンピック」がある。1940(昭和15)年の東京オリンピックだ。アジアで初めて開催されるはずだった。
大会の候補地を争った都市は、ローマやヘルシンキ。これらの国際都市を打ち破って東京が選ばれた。
ところが、1937年にシナ事変が勃発。陸軍からオリンピック反対の声があがり、首相の近衛文麿も戦争遂行に不必要な資材の使用を制限。ヨーロッパの情勢も不安定になり、1938(昭和13)年7月に日本政府は開催中止を決定した。
聖なる休戦
オリンピックは「平和の祭典」とも呼ばれるが、幻想を抱いてはいけない。
古代ギリシアは、ポリスと呼ばれる都市国家から成り、その代表選手達が会場に集まり技を競った。開催期間だけは互いに手出しをせず、戦闘が一時的に収まるので「聖なる休戦」と呼ばれた。
オリンピックの織りなす歴史は、感動の背後に政治と利害が深く関わっている。水面下で行われている政治駆け引きに注視すべきである。
ー岡崎 匡史
PS . 以下の文献を参考にしました。
・橋場弦、村田奈々子編『学問としてのオリンピック』(山川出版社、2016年)
この記事の著者
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。