From: 岡崎 匡史
研究室より
日本の大学で教鞭をとっていた頃、気をつけていたことがある。
5月のゴールデンウィークが過ぎたとき、欠席者を出さないことだ。
大学に入りたての新入生は、4月は緊張感があり、エネルギーに満ちあふれている。
しかし、5月の連休を境に大きな分かれ道がある。大学に幻滅する者もいれば、孤独感を味わいふさぎこむ学生もいる。アルバイトや遊び漬けの毎日を送る学生も出てくる。
だから、5月の連休明けに脱落者が出ることなく、授業を再開させることができれば、きっとこのクラスは1年間大丈夫だろうなと確信を持てる。
関係性を構築する
雰囲気のよいクラスにするには、どうすればよいのか?
見ず知らずの学生同士に、新たな関係性を構築させるにはどんな方法があるのか?
まず、最初のクラスで緊張感をほぐさなければならない。
リラックスさせる簡単な方法は、学生同士に会話をするきっかけを作ることだ。
定員40名のクラスであれば、1から20までの数字を書いた出席カード(メモ用紙など)を2セット用意する。このカードを無作為に配布すると、教室内に同じ数字をもったカードの学生は2名いる。
お互いにペアとなる数字を探させ、5分間ほど自己紹介をさせる。
他己紹介
さあ、次の課題はここから。
ペアになった学生同士で、教室のすべての人に「他己紹介」をさせる。
「自己紹介」ではなく、お互いにお互いを紹介させるのである。
知り合って間もない人を、クラスのみんなに紹介する。だから、相手のことを深く知らなくてはならない。
ここで、再び時間をとって、学生が互いのことを真剣に知り合うよう仕向ける。
そして、本番の「他己紹介」を迎える。
相手の魅力を引き出し、喜ぶような紹介をしなくてはとプレッシャーがかかる。笑いをとりにいく者もいれば、照れながら真面目に話す学生もいる。教室の学生もいずれ自分の順番が回ってくるので、人の話に耳を傾ける。
「他己紹介」をすると、クラスの雰囲気が明るくなり、どことなく風通しがよくなる。
学校現場だけでなく、新人研修や初対面同士での会合などで、「他己紹介」をしてみてはいかがであろうか。きっと、新たな気づきがあるはず。
ー岡崎 匡史
この記事の著者
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。