湾岸戦争とは何だったのか

by 西 鋭夫 February 7th, 2019

話にならない論調


私は、湾岸戦争が日本の弱さ、すなわち日本の精神の不在を世界にさらけ出した大事件だと思っている。

湾岸戦争直後、日本でテレビ討論を見ていたら、日本の将来をよりいっそう暗くするような番組に出くわした。

ある大新聞社の論説委員が、ものすごい勢いで炎上していたクウェート油田の大火災の責任はアメリカにあると言った。今世紀最悪の大気汚染、海水汚染はアメリカの責任だと断定していた。

ペルシャ湾に計り知れない量の原油を放出したのはフセインだ。多数の油井に火をつけ、暴虐をほしいままにしたのは、多国籍軍(アメリカ軍中心)に攻められる前にクモの子を散らすように敗走した、臆病なイラク軍ではないか。


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この新聞論説者が侵入国イラク軍の無謀な環境破壊については何も言わなかったのには驚かされた。イラクのクウェート侵略はアラブ諸国だけの「内輪のトラブル」なので、アメリカやイギリスが出る幕ではないと断言する、大学の教授たちもいた。


湾岸危機の本質とは


フセインがクウェートの次にサウジ・アラビア、エジプトを武力で占領しても、「アラブ諸国の内輪ゲンカ」として無視するのか。中国や北朝鮮が日本を攻めてきたら、「アジア民族間の内輪ゲンカ」といえるのか。

アメリカがでしゃばったと非難するが、アメリカのほかにいったいどこの国が、世界平和秩序のために、日本経済の自由活動のために、主導権を握り実行に移していったというのだ。

日本はフセインと「お話し会」をして事を収め、石油を売ってもらうため、フセインの言うとおりにするつもりだったのだろうか。

また、ある有識者たちは、「今度のような侵略事変が、もしアフリカで起こっていたのなら、アメリカはあれほど躍起にならなかっただろう」と言う。当たり前だ。中東には石油があるからだ。


他国民の血でメシを食う人々


石油は経済大国日本にとっては国の血液だ。必死にならない日本が痴呆状態なのだ。

悪いことは重なるもので、この「痴呆状態」を純粋無垢の平和主義の証だと錯覚している。湾岸戦争の成り行きに日本経済の命がかかっていたと言っても過言ではないのに、ボケればボケるほど平和主義信仰の深さを表すものと信じ込んでいる人が、日本にはたくさんいる。

アメリカの軍事力の裏に隠れて金儲けにセッセと励ませてもらい、アメリカ「進駐軍」にも日本の地価の高い基地を「提供」し、日本の防衛までしてもらっているのだ。それなのに、その維持費を全額出費するかどうかと文句をつけている。いやならアメリカに「出て行ってくれ」とハッキリと言い、日本は自国で自己防衛すると宣言するべきだ。



西鋭夫著『富国弱民ニッポン』

第1章 富国日本の現状−10




この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

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1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。