動けない自衛隊
日本の人材と資産が世界中に広がっている。今や、国連軍に加わり世界の秩序に貢献しない自衛隊は、その存在価値を問われて当然である。動けない自衛隊は、国費の浪費だ。
自衛隊をなくせと言っているのではない。その反対だ。国を守る自衛隊が、第9条の陰に隠れるような惨めな生き様をしてはいけない。
私は、自衛隊を正々堂々と「国防軍」にするべきだと主張している。日本を50年間以上も牛耳っていながら、自衛隊を居候のような状態している自民党の腑甲斐なさに文句を言っているのだ。
平和の代償
第一次湾岸戦争の時、50万人の米将兵が血を流して戦った。米国は「日本国民は連合軍の一員である」と宣言して欲しかった。それに伴う人的・物質的な援護を待ち望んでいた。日本の経済活動が自由に営める世界の平和秩序はタダではない。
日本の有識者と言われる人たちは「アメリカは世界の警察官ではない」と非難をするが、日本は人さらいの隣国(日本人を目の敵にしている北朝鮮)に対して何らかの手を打ったのか。日本は「平和的解決」という言葉に酔っていて、いくらひどい仕打ちをされても、お話をして相手の発作的な暴力をなだめようとする。
だが、案の定、殴られ蹴られ、引き返してくる。弱肉強食の世界で、この弱虫作戦は必ず負ける。「平和的解決」は武力の後押しがないと効果がない。武力がなければ、ただの願望である。
日本国内で「平和的」という声を聞くと、反射的に人々の思考が止まる。異論を唱えると、「平和」に反対している悪者と見られる。日本は自分で仕掛けた希望的観測の罠にはまり、実情に合った柔軟な発想ができない状態である。
大国の品格
10年間以上続いている平成大不況にもかかわらず、日本は経済大国だ。扇のように広がっているアジアで、アジア経済の要である。「大国」には大国らしい外交の姿勢があり、国としての品格と気位を保つ必要もある。日本から多額の援助をどっさり貰っている国々が感謝もせず日本叩きをしているのなら、援助を中止するくらいの心構えが必要なのだ。
私は、米国で第一次湾岸戦争を見た。あの戦争は、戦後日本にとって最悪の事件であると思っている。日本が世界経済の頂点に登りあがった時に起こったからだ。日本が繁栄の理想であると思われており、その反面アメリカは頂上から転がり落ちていると見られていた時、日本が「世界大国」のタイトルを懸けた関ヶ原で、縮み上がったかのように動かず、「平和的解決」の模索に明け暮れていた。
西鋭夫著『日米魂力戦』
第5章 戦争と平成日本 -11
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。