国連財政の大問題

by 西 鋭夫 May 21st, 2018

日本の国連加盟


国連加盟を渴望していた日本は、やっと1956年12月18日、世界の村八分から解放され、第80番目の「国連メンバー」にしてもらった。私が中学2年生の時で、国を挙げてのお祭りであった。

学校の先生が「国連」「ユネスコ」と言っただけで、私たちは反射的に「平和」と思った。

村八分から釈放されたと喜んでいたら、「保釈金」(国連予算の分担金)を納めなければならないと通告された。日本の国連会費(国民の税金)だけが毎年増える仕組みが作られていた。国の経済の大きさ(GNP)、国の支払い能力、人口、国民所得に比例して会費が増えてゆくという方式だということだが、そんな甘い算数をする世の中ではない。数字を出す。細かい話ではない。


分担金


日本が加盟させてもらった時には、国連予算の1.29%を分担した。

現在、国連加盟国は、191ヵ国ある。

日本の国民総生産は、世界の総生産の14.4%。

アメリカの国民総生産は、日本の2倍強で、世界の総生産の30%。

国連の2003年度予算総額(通常予算と平和維持予算の合計)は、5000億円。

日本の分担額は国連の予算額の20%。年間1000億円以上も出している。

アメリカは、日本に当てはめられている方程式に従うと、40%の分担額を差し出さねばならないのに、22%だけ。アメリカは多すぎると文句を言っている。文句を言うだけではない。払わない。

国連財政が抱える大きな問題は、多額の滞納金である。2000年度には、22.6億ドル(2500億円)の滞納金があり、13.2億ドル(1500億円)が米国による滞納だ。2002年頃から、渋々と支払い始めた。

なぜか、日本と米国の2ヵ国だけが、国連予算総額の42%も出資している。他の189ヵ国はほとんど出していない。だが、1国1票で、国連は悪平等の多数決で物事を決めている。国連は、金は出さないのに口ばかり出す国々の集会場で、集会の経費は日本とアメリカが出す。

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国際連合



帝国アメリカの振る舞い


それでも、アメリカには救いがある。日本にはない。

アメリカは、国連で最も重要な機関、世界平和の維持のために戦争をするかしないかを決定する安全保障理事会(安保理)の永久常任理事国であり、全ての決議に対して絶大なる拒否権を持っている国だ。この拒否権は、水戸黄門の「葵の紋の印籠」と同じ威力を持っている。

2003年3月19日に開始された第二次湾岸・イラク戦争をめぐり、安保理でフランスとアメリカが大喧嘩をした。この両国は拒否権を持っており、それを使うか使わないかの脅し合いであった。

ロシアと中国とドイツに応援してもらっていたフランスが「アメリカの戦争行為に拒否権を発動する」と断言したため、米国政府は安保理を無視してイラクに先制攻撃をかけた。



西鋭夫著『日米魂力戦』

第4章「国の意識」の違い -25



この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。