謝罪外交の終着点

by 西 鋭夫 April 30th, 2018

対中ODAの真相


古森義久(著名な国際新聞記者)の目が覚める『日中再考』(産経新聞社、2001年)によると、中国は過去20年間で日本から6兆円のODAを受け取った。

この「6兆円」には説明が必要。6兆円は東京での「額面」であり、日本よりも物価や人件費が10分の1である北京で換算すれば、60兆円である(日本ではコメ1キロが400円。北京では1キロ30円)。

中国の地方へ行けば、物価は日本の20分の1なので、120兆円の力を持った日本からの献金である。中国政府は、忌み嫌い軽蔑している国から巨額の援助金を貰っていることを自国民に報道しているかどうか疑わしい。普通の国際礼儀では、こんなに沢山お金をくれる国の悪口は言わない。言えない。

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堕ち行く日本


日本の企業は、製造技術を人件費が日本の10分の1である中国に輸出している。製造業は水が低い方に流れるように、人件費の低い国に移動する。世界で1番と評価されていた日本の技術が中国に移れば、上海の世界一大きな百貨店「ヤオハン」が乗っ取られたように、いずれ性能が高く安い中国製が日本へ逆輸入され、日本製は競争にもならず死滅してゆく。日本国内で失業者が激増する。日本自滅が「日本謝罪」の終着駅なのだろうか。

日中関係について、2002年の夏『朝日新聞』が中国社会学院と共同で面接による世論調査を行ったところ、両国民の持っている認識の違いがあからさまに出た。

「過去の問題で日本は十分に償ったと思うか」の質問に、「十分してきた」と答えた日本人が42%で、「不十分」が44%である。5年前、同じ質問に対して日本人の返答は、26%が「十分」、58%が「不十分」。もう十分に償ったと思っている日本人が大幅に増えている。

中国では、86%が「不十分」と答え、中国人のほとんどが日本からの「償い」がまだ足りないと思っている。


歴史教科書批判


日中関係を改善してゆくために、これから何に力を入れるべきかの質問に対して、日本人の67%は「過去にとらわれない新たな関係作り」と答えた。中国では、「日本が心から謝罪すること」が41%、「歴史教育の充実」が25%で、日本の過去(弱み)にしがみついているような精神状態である。

この日中アンケートの1年前、国連の人権会議(2001年4月10日と11日)で中国代表団の副代表が「日本の右翼的な教科書が歴史を枉げて侵略を肯定している」と激怒し、「日本政府は、日本の軍国主義による侵略の歴史を教科書に正確に記述せよ」と要求した。

中国国連協会の代表もこの人権会議で「日本軍国主義者は中国で3000万人の婦女子や子供を含む市民を虐殺し、多くの婦女を蹂躪した。日本の教科書はこの事実を否定している」と憤った。

中国は物事を誇張する才能に長けていると聞いていたが、本当だ。



西鋭夫著『日米魂力戦』

第4章「国の意識」の違い -19

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。