60円対250円
日本の稲作がいかに非効率的か、単純な数字を比較すれば、簡単に見えてくる。小型飛行機で種まきをするアメリカの稲作は、スケールが違う低価格の大量生産だ。カリフォルニア米は1キログラムを生産するのに60円。日本米は250円かかる。60円対250円では競争にもならないので、とてつもない関税をカリフォルニア米にかけ、日本の消費者に人工的に高くしたカリフォルニア米を売る。
この甘やかし制度が日本農業の生産効率を年々低下させ、日本の消費者が世界で1番高い食物を買わされている。これでは、崩壊したソ連の惨めな国営農業の二の舞になる。もうすでに、なっているのかもしれない。
カリフォルニア米
「カリフォルニア米は美味しくない」と思われている人もいるかもしれないが、そうではない。私はご飯が好きなので、断言できる。日本米とカリフォルニア米(日本米の原種を使っている)を比べて、違いが分かる人はいない。在米日本人はカリフォルニア米が大好きである。安い。
1キロが1ドル(120円弱)である。日本では、1キロが400円。日本の消費者も安い美味しいカリフォルニア米を買える選択肢があっても良いのではないか。日本人の食費がアメリカ並みに家計の10%位になれば、日本の消費者は「お金持ち」になる。
日本がカリフォルニア米を巡って大討論をしている間に、中国がスルリと割り込んできた。中国も日本から美味しいコメの原種を仕入れ、大々的な稲作に取り込み、日本へのコメ輸出で外貨を稼ぐのに必死である。すでに安い美味しい中国米が大量に入ってきており、輸入米の50%も占めている。北京では、コメ1キロが30円。
中国の高度経済成長
「コメは自給白足」と叫ぶ政治家もいるが、貿易大国日本で自給自足しなければならないモノはない。その発想自体が現状を無視した空論である。余剰米の異常現象を解消してからの話であろう。
海外から日本への輸入総額の18.2%は、アメリカからだ。第2番目は、中国の17.8%である。中国からの総額がアメリカを抜くのは、時間の問題である。言い換えれば、中国の高度成長(驚異の年間8%)は日本市場なしでは達成できない。中国は日本におんぶされている状態なのだ。この原稿の校正をしていた4月末に、中国からの輪入がアメリカを抜いて1番になったというニュースが流れた。
にもかかわらず、2000年、中国政府ノンバンクが、邦銀から借りながらも返せないと言った額は4300億円で、日本が負担する在日米軍経費の1年分である。(『月刊日本』平成12年3月号)。
中国が日本からの巨額の借金を反古にすると言って、涼しい顔をしていられるほど一方的な日中関係だ。でも、日本は侮辱に耐え、日中関係に波風を立てないように涙ぐましい努力をするだろう。
西鋭夫著『日米魂力戦』
第4章「国の意識」の違い -17
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。