宇宙と政治

by 岡崎匡史 September 30th, 2017

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研究室より

かつてイギリスの作家ジョージ・ウェルズは、『宇宙戦争』という小説を発表し、火星人が地球に到来し、地球を侵略する物語を描いた。

はたして、宇宙戦争はSF小説の出来事なのか。世界各国で宇宙の政治的駆け引きが熾烈を極めている。

宇宙というと、日常生活からかけ離れていると思うが、我々の身近にある。現在3500基以上もの人工衛星が地球の周りを回っている。たとえば、衛星放送は宇宙技術の恩恵を受けている。衛星放送の誕生で、共産主義や独裁国家は、マスコミの検閲をすることが難しくなった。

宇宙と軍事技術

宇宙開発は軍事技術と密接に関わっている。大陸間弾道ミサイルは、ロケットエンジンで推進する。言うまでもなく、宇宙技術は大量破壊兵器に転用される恐れが常にある。

ロケットとミサイルは似たようなものと思われがちだが、大きな違いがある。それは、燃料が違うことだ。


ミサイル=個体燃料(長期保存可能・ミサイル発射可能状態を常に維持・即座に対応)
ロケット=液体燃料(燃料注入に時間要・長期保存に不適・燃焼がよく推進力がよい)

つまり、軍事兵器のミサイルにも、ロケット技術が応用されている。だから、北朝鮮が発射する飛翔体を「ミサイル」と言ったり、ときには「ロケット」と呼ぶ。

宇宙資源外交

米ソ冷戦後は、発展途上国も宇宙開発に力を注いでいる。途上国は、宇宙開発は先進国に仲間入りするための「入場券」とみなしているからだ。

2003年、中国は有人宇宙飛行を成功させ、自国民のプライドを満たした。しかも、中国は宇宙ビジネスに乗り出しており、衛星を軌道上まで運び他国に引き渡す「運送業」を行っている。

中国は、ナイジェリア、ベネズエラ、インドネシア、ボリビアの衛星を低価格で打ち上げ、さらにブラジルとは共同で地球観測衛星を開発している。これらの国々に共通することは、豊富な天然資源を持っていることだ。中国は、宇宙という取引材料を利用して資源外交を行っている。

夜、空を見上げてみよう。
美しい星空の背後で、宇宙と資源をめぐる争いが繰り広げられている。


ー岡崎 匡史
以下の文献を参考にしました。
鈴木一人『宇宙開発と国際政治』(岩波書店、2011年)
星山隆『日本外交からみた宇宙』(作品社、2016年)

この記事の著者

岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。

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岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。