今日は、漢字のクイズです。
幕末・明治維新の歴史が好きな人でも、迷うかもしれません。
ぜひ、会話のネタにでも使ってください。
天皇を政治の中心として尊び、夷狄(いてき)である外国人を追い払う。幕末に盛んに唱えられた反幕府運動のスローガンは何でしょう?
だれでも知ってますね。「そんのうじょうい」です。
では、漢字で書いてみましょう。
日本語の難しさ
パソコンで漢字変換しようとすると、二つの用語が出てきます。
「尊王攘夷」と「尊皇攘夷」
「王」と「皇」、どちらの漢字を使ったらよいのでしょうか?
どちらの文字を使っても、よい感じがします。一文字違うだけだし、読み方が変わる訳でもない。でも、どうして「尊王」と「尊皇」の二つの言葉があるのか。謎は深まるばかり。
漢字と時代背景
実は、この二つの言葉。使われた時期(時代区分)が違うのです。
もともと、「そんのう」は「尊王」と書きます。天皇を尊ぶという意味です。幕末の志士たちの文献には「尊王」という言葉がほぼ使われています。
では、いつから「尊王」が「尊皇」と変わっていったのか?
大正中期から昭和10年代にかけてです。
なぜか?
国粋主義者が「尊皇」の使用を声高に主張したからです。
「王」は、中国古来の政治思想「易姓革命」を暗示する。中国を蔑視する当時の風潮と日本の優越性を強調しなければならない。だから、「皇」が用いられるようになったのです。その上、「皇」を使わないと新聞や雑誌は用紙配当で不利になる。
こうして、現代の日本には「尊王」と「尊皇」という二つの言葉が残っているのです。
漢字の使われ方を探るだけでも、歴史は蘇ってきますね。
ー岡崎 匡史
PS. 以下の文献を参考にしました。
横田達雄『武市半平太と土佐勤王党』(私家版、2007年)
癖のある文体ですが名著です。限定1000冊の著作なので、古本市場でもなかなか入手できない文献です。もし、古本屋で見つけたら、購入することをお勧めします。
この記事の著者
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。