解任オプション
翌7日、トルーマンは、マーシャル国防長官、ブラッドレー統合参謀本部議長、アチソン国務長官と長時間に亘り、マッカーサーにどのような懲戒措置をするべきかを話し合った。
アチソンとマーシャルは「マッカーサーを解任せよ」とトルーマンに進言した。
9日、若いペース陸軍長官が来日し、トルーマンの強い不快感と警告をマッカーサーに口頭で伝えた。ペースは、少なくとも表面的にはマッカーサーの「上官」である。この2人は昼食を共にした。
緊急会議
ワシントンでは(8日、ワシントン時間)、統合参謀本部が緊急会議を開き、ブラッドレー元帥議長、コリンズ陸軍参謀総長、バンデンバーグ空軍参謀総長、シャーマン海軍作戦部長の4人がマッカーサーについて話し合った。
この4人は、マッカーサーを深く尊敬していたので、何か新しい解決案はないものかと苦悩した。絶望感が漂っていた。
この4人は、トルーマンがマッカーサーを解任したいことを知っていたのだ。
バンデンバーグ空軍参謀総長とシャーマン海軍作戦部長は解任に強く反対した。
マッカーサーの「考え」
10日、東京のGHQは、ペース陸軍長官がマッカーサー元帥を訓戒しに来日したのではない、と発表した。同日、AP通信東京支局は、マッカーサーがペース長官に、自分の考えを切々と訴えたと報道した。
マッカーサーの「考え」は4点に要約される。
⑴ 共産主義は全面的に闘うことによってのみ打破することが出来る。中共軍の満洲軍事基地を爆撃するべし。
⑵ アジアを軽視し、ヨーロッパの防衛を強固にすることは誤りである。
⑶ 中共軍に対して連合軍は、持てる武器全てを使い、闘うべきだ。原爆も武器である。
⑷ 中共軍を徹底的に打破するか、または、彼等が決定的な敗北をすると悟らなければ、朝鮮戦争の解決はない。
原爆戦争を阻止せよ!
翌11日、真夜中の午前一時、トルーマン大統領は記者会見を行ない、「マッカーサー解任」を公にした。
同日、午後10時30分(日本時間、12日午後零時30分)、トルーマンは全米ラジオ放送で、「我々は第三次世界大戦を防止しようとしているのである」と断言し、彼のマッカーサー解任につき、国民の説得に努めた。
トルーマンは、5月7日には、マッカーサーの論法が通れば、結果は「原爆戦争」になるかもしれないと言った。
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。