戦争勃発の阻止
国務省は、「平和条約の中で日本軍の復活を認めることは適当ではない」と主張し、その理由を並べた。
⑴ 「日本の安全保障に関するアメリカの目的は、ソ連軍の攻撃に対する防衛よりも、戦争の勃発を防止することである。これは、アメリカが平和条約調印国に代わって、また日本国の要請により、日本にアメリカ軍を駐留させると言明し、他国による日本への武力攻撃は全面戦争への挑発と見做すという我々の決意を明らかにすることによって達成できる」
経済復興と国民感情
⑵ 「アメリカの援助と日本の資源は、日本の強力な警察隊の維持と経済復興と社会的成長に集中させるべきである。この政策で、アメリカに友好的である日本の姿勢をさらに強く維持することができる。我々の援助や努力、そして日本の資源を日本再軍備のために転用すれば、この均衡のとれた政策を破壊するであろう」
⑶ 「アメリカは、日本国憲法で決められた戦争放棄を続行するか中止するか、という日本人の考えを聞かずに、日本を再武装させる決定を下すべきではない。さもないと、日本人は再武装をアメリカの戦略的な理由だけで、無理やりに押し付けられたものと考えるだろう。現在、日本において憲法改正を求める声は殆どないことにも注目すべきである」
再軍備の危険性
⑷ 「もし、アメリカが日本を再軍備するのなら、日本は、アメリカと友好的であり続けるということ、少なくとも敵にはならないということを今よりも明確に証明しなければならない。日本を再軍備した後、日本が敵になれば、日本の軍隊や戦争を支える産業は、ソ連と共産中国の戦争能力を厖大に増やすことになる」
⑸ 「日本軍の復活は、日本国憲法の戦争放棄と、今日までのアメリカ占領政策に真っ向から対立するものである。この政策変更は、アメリカの誠実さと今までの占領方針の正当性について、日本国民は強い疑念を持つであろう。この日本人の疑念は、アメリカの影響力と日本における民主主義を弱めることになり、日本の共産主義者たちをより一層活発にさせるであろう」
アメリカの責務
⑹ 「連合国諸国は、日本の国家・民族主義が再び台頭し、攻撃的になることを非常に恐れている。日本の再軍備は、彼等を恐怖の坩堝へ落とし込む。また、フランスはそれをドイツ軍復活の前触れと見做すだろう。それ故、日本の安全保障のために、アメリカは自国の軍隊を駐留させなければならない。この軍隊進駐策には、道徳的、心理的な利点がある。というのは、国連が日本の平和と安全の維持に全責任を負うはずであったが、それに失敗したので、アメリカがこの銭のかかる危険な役割を引き受けているからである」
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。