魂の消滅

by 西 鋭夫 December 6th, 2016

己を失った日本人


高い代償は、もう1つある。敵軍の占領よりも怖い、我々日本人の「信念」の消滅、日本人としての「認識」の死滅である。

朝鮮戦争は、日本国民の政治文化に痛烈な打撃を与え、我々の成長を妨げた。

いや、妨げただけでなく、我々の生活を根本から歪めた。いじけたものにした。

その「いじけた精神構造」が昭和末期から平成にかけ、目も当てられない惨状として、我々の日常生活にその醜い姿を現わしている。



野蛮な国政


我々は、政治的な反対とか「違い」があると、相手を「論」で説得することなく、「異端者」、即ち「悪人」の烙印を押し、追放することを学んだ。

目先の、刹那的な損得勘定だけで、国の行政を行なう野蛮さも学んだ。この目先の損得と野蛮な手段は、我々の政治を、発育不全な、幼稚なものにした。

目先勘定だけで実行された行政の典型的なものは、「レッドパージ」とか「赤狩り」と言われる共産主義者の追放であった。職場から、日本社会からの追放は、マッカーサーと日本政府のお墨付きで行なわれた。



イデオロギー戦争


「共産主義者だから、追放してもよいではないか」と思う人たちもいるであろう。しかし、この「武器」は、実に気紛れで、その矛先がいつ変わるか全く分からない。

この野蛮な「武器」の次の的になるのは、共産主義者の反対側に座っている人たちか、それとも、政治に全く関心のない人たちかもしれない。

「日本の歴史をもう一度見直そう」「神話もお伽話も日本歴史文化の大切な生命の一つである」「戦争で亡くなられた英霊に、国として敬意を払うべきだ」と発言する人たちを、「右翼」と罵倒し、侮辱して当たり前だと思っている人たちが、現在多いのではないか。


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イデオロギーの違いを問答無用で迫害すると、その刃は必ず「己の身」を斬る。


この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。