ドイツ文明万歳!

by 西 鋭夫 October 24th, 2016

教育使節団のドイツ訪問


教育使節団が日本で活躍している最中に、アメリカの全国教育協議会は、同様の使節団をドイツに派遣することを提案した。

1946年3月19日、同協議会のウィリアム・G・カー事務局長代理は、ロバート・P・パターソン陸軍長官に、「現在、訪日中の使節団と同じような目的を持った教育委員会をドイツに派遣し、同じような調査と報告をさせるべきである」と正式に要請した。

同協議会のウィラード・E・ギブンズ事務局長は、対日使節団に参加していた。

陸軍長官は、この手紙を対日使節団を管理していたベントン国務次官に回付した。

ベントンは、改めて対日使節団の「報告書」を読み、ストッダード団長と話し合った後で、同様の使節団をドイツに派遣した方がよいとの結論に達した。



ドイツ崇拝


8月23日、対ドイツ教育使節団はアメリカ占領地区を訪れ、1カ月滞在した。9月21日、パターソンとベントンは報告書の写しを受け取った。

東京に来た教育使節団と、ベルリンへ行った使節団は驚くべき違いを見せる。

対ドイツ使節団が、ナチ・ドイツに謙遜した態度で報告を書き上げていることだ。謙遜どころか、称賛に近い。

「いかなる国も――古代ギリシアやローマを除けば――我々の文明の共通財産に対して、ドイツほど貢献した国はなかった。ドイツの教育問題を取り上げる場合、この功績を無視したり、それに対する謝意を欠いたりすることがあってはならない」

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勿論のこと、ドイツ教育使節団は、ドイツ国民を非ナチ化するために、ドイツ語を廃止すべきとは夢にも考えなかった。


日本蔑視


対日使節団は、日本国民の最大の美点は「礼儀」だと言った。「少なくとも、日本国民は礼節の正しさで世界中に知られている」。

ドイツ使節団は「世界中何処にも、飢餓や経済の混乱の上に民主的政府を成功に導くような機構を樹立することは不可能である」と認識していたが、日本使節団は「経済上の要因は重要であるが、最高というわけではない」と述べている。

この差別は、人種差別から来るものなのか。

アメリカは、日本について全く無知でありながらも、日本国民と日本文化をそれほど軽視していたのだろう。


この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。