知能不全の日本人
この説明会の二週間後、教育使節団は「書かれた形の日本語は、学習にとって恐るべき障碍だ」と論断した。
使節団の断定は、「書き言葉としての日本語は、今日普及している言葉の中で最も難しいものだろう」というホールの意見と同じものだった。
日本の生徒たちが、「いかに賢く勤勉でも、漢字を覚えたり書いたりするために割り当てられる法外な時間数の割には、成果は期待外れである」と、使節団はホールと同じ意見を述べている。
「小学校卒業時の生徒たちには、民主社会の市民になるために必要な言語能力が欠けている。新聞や大衆雑誌のような物を読みこなせない。また、現代の問題や思想を扱った書物の内容を理解することもできない。その上、生徒たちは、読書を卒業後の啓発の道具にできる程度の国語力をつけていない」
ローマ字化の強要
使節団は、日本人は初等教育を終えた12歳以後、何等新しいものを学ばないし、また学べないと考えた。マッカーサーの「日本人は12歳の少年ぐらいの知的水準」と完全に同じ発想である。
使節団は婉曲な言い回しをたくさん用いて、「漢字にはある種の芸術的価値などが内在しており、それは音標文字体系(ローマ字)では決して完全に伝え得るものではない」が、
「漢字は一般的な書き言葉としては全廃されるべきであり、ローマ字が採用されるべきである」
「民主社会の市民として成長し、また、国際理解を増大するためには、カタカナよりも、ローマ字の方が一段と有利である」
「言葉とは、広い高速道路であって、障碍物であってはならない」などと、要は、「日本語をローマ字に替えよ」、という信じがたい勧告をし続けた。
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。