漢字無用論

by 西 鋭夫 July 26th, 2016

ローマ字より優れたカタカナ


この提案の実用性。

⑴ カタカナは、日本を無能にしない。

字の読める日本人は、カタカナも読める。漢字を読めなくても、より簡単なカタカナは読める。ローマ字化の利点は明瞭ではあるが、実用的ではない。その理由は、日本で一般的に読まれていないからである。

それ故、性急なローマ字化は日本を事実上、無能国家にしてしまう。それは軍事占領政府にとり、敵性宣伝に曝されるよりも一層危険である。

文書による意思疎通ができない近代国家は混乱に陥る。


カタカナの汎用性


⑵ 漢字で書かれている文書をカタカナに書き換えることは簡単である。

この作業は速記文字をタイプするよりも楽だ。漢字とカタカナを知っていれば、誰でもできる。

⑶ カタカナには宣伝価値がある。

カタカナは、日本人が発明した数少ないものの一つであり、また最もすぐれたものの一つである。カタカナの使用は日本民族の誇りでもある。

教育を受けた日本国民は、カタカナの使用を中国の文字である漢字の使用よりも好ましいと考えている。


カタカナ政策の正当化


⑷ この種の国家的大改革については前例がある。

過去20年間に日本は産業の近代化を図るため、度量衡をメートル法に変えてきた。......日本は行政中央集権化で、中央集権が行なわれていない場合では、ほぼ不可能と思われる革新的改革を成し遂げることができた。

⑸ 改革は永続的に進める。

1945年初めから学校は閉鎖されており、今後、戦闘状態下であろうと休戦状態であろうと、占領前の大混乱で、漢字教育は2年から5年の遅れをきたすであろう。

この遅れに追い撃ちをかけ、軍事占領政府が正式に漢字を禁止すれば、国語としての漢字に必ず終止符を打つことになろう。

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漢字は習得が難しくて、一定期間禁止に追い込めば、息を吹き返すのに極めて長期の習得年月を必要とする。話し言葉によって生き長らえることができる代物ではない。10年間も漢字教育を禁止すれば、漢字の読み書きは死に絶える。そして、将来は「日本古典」の研究者しか習得しなくなるであろう。


この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。