国家と神道

by 西 鋭夫 April 3rd, 2016

切り離し


その破壊の最も大きなものは、マッカーサーの明治憲法書きなおし命令だ。

日本政府が明治憲法の精神を護ろうと必死になっている時、マッカーサーは日本帝国の眼に見える「敵」、即ち天皇の「神聖」を攻撃する。

1945年12月15日、マッカーサーは、「神道」と国家を切り離せとの命令を下した。

この卓越した軍人は、日本国民が偶像崇拝の神道の病に冒され、天皇のためなら玉砕さえも恐れない狂気の精神状態にあると思っていた。

この恐るべき国民を弱体化せねば、アメリカが危なくなる。この命令で、天皇大権の精神的基盤を破壊する決意を明確にした。


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陛下のご決断


直ちに、驚愕するに値する「平伏」が日本国民に示された。

天皇陛下が1946年の新年のお言葉の中で自ら神性を否定された。

「朕と爾等国民との間の紐帯は、終始相互の信頼と敬愛とに依りて結ばれ、単なる神話と伝説とに依りて生ぜるものに非ず。天皇を以て現御神とし、且日本国民を以て他の民族に優越せる民族にして、延て世界を支配すべき運命を有すとの架空なる観念に基くものに非ず」(原文は漢字とカタカナ)


紐帯の重み


幣原喜重郎首相が起草した「お言葉」だ。

天皇は、「親子の愛」と「忠誠心」を強調された。

失望のどん底に落ち込んでいる国民の間に極端に走る傾向が広がりだし、道徳観は失われ、社会思想の混乱の兆候が見え始めたからである。

思想の混乱という表現でさえ、事態を甘く見過ぎたものであろう。

怒涛のように流れ込んできたアメリカ民主主義や、日本史上、初めて共産主義者が公然と政治活動をし始めたこと、そして餓えた国民が、帝国政府に抱いていた絶望感と憎しみが巷に溢れ、国民は思考の混乱を超えた虚脱状態にあった。

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。