「教育勅語」防衛論

by 西 鋭夫 March 25th, 2016

個性・人格・自由の尊重


日本国民を道徳的に立ち直らせるために、前田文相は「教育勅語」に示された美徳と英知にしたがうべきだと、1945年10月15日の新教育方針中央講習会の席上で全国の教育指導者に言った。

前田文相はさらに、帝国議会衆議院で、

「不幸に致しまして一時反動時代におきましては、この教育勅語の謹解にすらよほど事を枉げた独善的、排外的な解釈も行われておったように考えられますので......この際におきまして教育勅語を再び虚心坦懐と申しますか、清明な心を以て一つ謹読をして見る、そこに本当に私共の申しております個性の完成とか、人格、自由の尊重とか言うものが出て来る」

と己の信念を述べた。

日本の指導者たちが、まるで「戦旗」でもあるかのように教育勅語防衛に懸命になっている間、GHQの態度は「我、関せず」であった。

アメリカ側の沈黙が、日本側を力づけ、マッカーサーの改革方針に恐怖の念を抱いていたが、この「独り相撲」では日本は勝ったと思っていた。


「教育勅語」


教育勅語の全文。

朕惟フニ我カ皇祖皇宗国ヲ肇ムルコト宏遠ニ徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世世厥ノ美ヲ済セルハ此レ我カ国体ノ精華ニシテ教育ノ淵源亦実ニ此ニ存ス爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭倹己ヲ持シ博愛衆ニ及ホシ学ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓発シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ広メ世務ヲ開キ常ニ国憲ヲ重シ国法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ是ノ如キハ独リ朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顕彰スルニ足ラン

斯ノ道ハ実ニ我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ咸其徳ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ


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日本国民の"ゲティスバーグ演説"


教育勅語の持つ重大さについては、京都第6軍軍政局のJ・J・シーフェリン司令官が、友人のケン・R・ダイク准将(初代CIE局長)に宛てた1945年12月9日付けの手紙の中で、明確に指摘していた。

「教育勅語は日本国民にとって日本の"ゲティスバーグ演説"だ。だが、教育勅語は極めて国粋主義的であり、新しいものが必要だ」

ゲティスバーグ演説とは、1863年11月19日、リンカーン大統領が行なったもので、彼の有名な「人民の、人民による、人民のための政府」という言葉はこの時に使われた。この演説はアメリカの神髄を語ったものとされている。

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。