日本政府の危惧
新憲法は、注目に値する二点の特徴をもっていた。
第一は、日本史上、例のなかった人権・市民権の保障である。
GHQ民政局は、国民の人権をめぐって日本政府が示した態度につき、次のように批判した。
「国民に保障された基本的人権が躓きとなっている。日本政府は、国民が自由を乱用するのではないかと恐れ、行き過ぎを防止する法的措置がとられなければ、行政が麻痺するのではないかと心配ばかりしている」
日本国民は、乱用できるほどの自由を手にしたことはなかった。
封じられた政府の意図
「行き過ぎを防止する法的措置」とは、かの悪名高き思想統制の復活を狙ったのだ。
それ故、GHQ民政局は、「個人的自由より国家優先論を前に出す傾向が強い日本政府の動き」に敏感に反応し、日本政府の意図を完全に封じた。
その結果をロバート・ウォード(アメリカの政治学者)は、「(憲法の)第3章は、市民的自由の擁護としては世界でも最も広範囲なものである」と的確に要約した。
「危険思想」の所在
「危険思想」というものは、日本ではもはやありえないことになった。
しかし、GHQは、日本のあらゆる印刷物、教科書、ラジオの内容の事前検閲や手紙の開封に忙しかった。「危険思想」を探していた。
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。