報道・思想の自由
マッカーサーは、1945年9月10日、「報道・思想の自由」に関する指令を発した。
⑴ 日本帝国政府は、真実でないことや公安を害するニュースを防止するため、 新聞、ラジオ、その他の媒体に必要な命令を出せ。
⑵ 連合国軍最高司令官(マッカーサー)は、言論の自由に対する制限を最小 限に抑える。敗戦から立ち直り、世界の平和愛好国の仲間入りをめざす「新生 日本」の努力を妨げない限り、連合国軍は日本の将来について自由な論議を奨 励する。
⑶ 論議を許されない事項は、公式に発表されない連合国軍部隊の動静や、連 合国軍に関する虚偽もしくは破壊的な批判や噂などである。
⑷ ラジオ放送は、ニュース、音楽、娯楽番組を中心とする。ニュース解説お よび情報に関わる放送は、東京スタジオ(NHK)からのものに限る。
⑸ 最高司令官は、真実でないことや公安を害する報道を行なう出版物と放送 局に対して、発行または業務の停止を命ずる。
この指令は、日本のマスコミを大混乱に陥(おちい)らせた。
日本の新聞等は、戦時中極めて効果的な政府の宣伝機関の役割を果たしてきたが、「マッカーサー民主主義」になると、「何を書いても自由」と考える風潮が横行していたからだ。
自由を誤解
マッカーサーが考えていた「自由」を誤解した報道機関は、何と声高に大東亜戦争を弁護した。
たとえば、日本最大の国営通信社「同盟」は、戦争の終結が連合国の軍事的優越性によってではなく、寧ろ天皇の「大御心」によって齎されたので、占領軍は日本帝国の「客」にすぎない、と報じた。
「同盟」は、マッカーサーから与えられた言論の自由を最大限に利用し、
⑴日本は原子爆弾さえなければ戦争に勝っただろう。原子爆弾は余りにも恐ろしい武器で、野蛮人だけが使える。
⑵日本は連合国と対等の立場で交渉できる。
⑶アメリカおよび連合国軍部隊は、残虐行為を行なっている。
⑷ソ連および他の連合国はアメリカの独占的支配に反対し、啀み合っている。
⑸占領軍の到着以来、犯罪が増加している、
などといった情報を国民に伝えた。
GHQは、こうした日本の「精神分裂的なあがき」を、「民主主義のための検閲」を実施する絶好のチャンスととらえた。
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。