財閥解体

by 西 鋭夫 May 6th, 2015

ズタズタの日本経済


占領下の日本経済をどうするのか。

ポツダム会議へ出席するトルーマン大統領のために国務省が書いた台本には、「占領軍の必要を満たし、軍政部の作戦の妨げにならないように、日本国民の飢餓や疾病の発生を防ぎ、日本経済は管理されるべき」とある。

この「管理」とは、「日本が再び経済戦争を仕掛けないよう手を打つ。日本に航空機産業を許さない。日本から重工業の力をも奪う」ということだ。

トルーマンが承認した「軍政基本指令」は、もっと冷酷に、「日本の苦境は自業自得である。連合国軍はそれを修復する責任を負うつもりはない」「貴下(マッカーサー)は、日本の経済復興または日本経済の強化に何らの責任も取らなくてよい」

「日本国民に、ある一定の生活水準を維持しなければならないという義務を負うものではない」「日本の生活水準は、日本が全ての軍事的野心を捨て、人的資源ならびに天然資源を平和的生活のためにのみ使い、心より連合国と協力することにかかっている」と断言する。

アメリカ政府は、日本の食うや食わずの自給生活により、日本帝国の内部崩壊が早められ、日本民主化が促進されると期待した。「労働、工業、農業分野の民主化が実行されるべきである。また、経済組織についても所有権や経営権が拡散されることが望ましい」と国務省は言う。

財閥の株券差し押さえ

67.org.JPG

財閥を解体する


同じ論法で、マッカーサーは時を移さず、1945年11月6日、「財閥解体」指令を出し、「収益と、生産・営業手段の所有権拡散を許す」「平和と民主的勢力の成長を助ける経済制度を日本国内で促進する」と宣言した。

解体されつつある日本経済に強い危機感を持ったビショップは、アチソン政治顧問に「日本の経済は背骨を抜き取られ、優秀な頭脳と優れた指導力も奪われ、経済活動に対する意気は上がらず、優柔不断と成り行き任せの態度が広がっている」と伝えた。

アチソンは、トルーマン大統領にあてた手紙の中で、「日本政府は国民に十分な食糧を供給できないので、我々の政治目的を推進するうえで必要な基盤を維持するためには、望む望まないにかかわらず、我々が救助物資を供給しなければならないでしょう」と進言している。

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

人気の投稿記事

ミャンマーと北朝鮮

アジア最後のフロンティア 北朝鮮の今後の動向を予測する上で、東南アジアにあるミャンマーは一つのポイントです。ミャンマーはアジア最…

by 西 鋭夫 November 8th, 2021

中朝関係の本当の姿

水面下でのつながり 中国が北朝鮮の核実験に対して、断固反対すると声明を出しました。しかし、中国の習近平政権と、北朝鮮の金正恩政権…

ミサイル / 中国 / 北朝鮮 / 核実験 / 米国

by 西 鋭夫 November 1st, 2021

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。